中国歴史小説と幻想的な恋の話


「源じいさんの愛した女」 第18話 後姿 

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           オランダ バロック 女性画家 ユーディト レイステル(1609-1660)
           レンブラントやフェルメールと同時代の画家である
           19世紀末まで彼女の存在は知られていなかった
           これは彼女の自画像である。
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お蔭様で現在第2位です。有難うございます。これかもよろしくお願いします。
たった半日の幻の様な一位でした





 あなたが生きている限り冴は一年に一度わしに会に来る。その時子供の話を聞かせて欲しいと言って何も持たずに家を出て行こうとした。

 わしは追いすがり、何処へ行くのか、一年に一度会いに来ると言うがその日はいつなのか尋ねたが、冴は何も言わず家を出て行った。

 いつの間にか東の空が茜色にそまり、足元を薄い靄に包まれながら、冴は振り返りもせず遠ざかって行った。

 わしは今まで感じたこともないほどの悲しみに襲われて、冴の名前を大声で叫んだ。道路に膝をつきながら自分でもこんなに涙が流れるのかと思ったほど泣いたよ。

 冴を取り戻す事が出来るなら、全てを失ってもよいと、神に祈ったけれど、怪訝そうな新聞配達の挨拶に、これが間違いのない現実なのだと知らされた。

 心の支えを失ったわしはしばらくの間仕事をする気もなく、家の中で見つかるはずのない冴の姿を捜していた。

 ある日高校生になっていた息子がわしの姿を見て、父さん。母さんはどこにも行ってないよ。ちゃんと自分の心の中に生きているよと逆に励まされてしまった。

 子供にとって、ある日突然母親が姿を消した事は相当なショックだったにも拘らず、父親を心配していたんだな。子供の気持ちがわかると、自分がしっかりしなければいけないと、思い直し、冴のいない辛さを仕事にぶつけるようになったんだ。

 冴は言葉通り、一年に一度わしに会いに来て、子供の成長の話を本当に嬉しそうに聞いて行くんだ。冴がわしから離れて行った時、冴の話を信じたわけではないが、あれから五十年、一緒に暮らした時間よりも長い年月が過ぎたにも拘らず、冴はあの時のままの姿で、ついこの間もこの山荘を訪れたのだよ」

 源じいさんは話終えると疲れたのかしばらく目を閉じた。

  私はグラスに残った琥珀色の液体を眺めながら、源じいさんにかける言葉を捜していた。

  やがて源じいさんは天井を見つめながら話はじめた。
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by shou20031 | 2005-02-28 23:15 | 大人のメルヘン

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永遠の愛ってあるのだろうか
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