中国歴史小説と幻想的な恋の話


「源じいさんの愛した女」 第17話  罪と罰

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           イタリア ルネッサンス 女性画家 エリザベッタ シラーニ(1638-1665)
           彼女は17歳で父親の工房から独立したが、27歳で早逝した。
           僅か10年の間に170の絵画と膨大な素描を残している。
           ルネッサンスを駆け抜けた女性だった。

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お蔭様で現在第2位です。有難うございます。これかもよろしくお願いします。
たった半日の幻の様な一位でした




 冴は自分だけを愛し続け、一緒に死んでくれる男を捜し求めて、信じられない時間を生き続けて来たと言うのだ。

  冴にとって男が誇ろうとする逞しさも、容姿も権力も、教養も必要がなかった。

  ただ自分だけを愛し続けてくれる男を求めて、世の中のあらゆる社会の男と結ばれ、そして裏切られて来た。

  信じ合う事が時間の流れの前にいとも脆く崩れ去る姿を、嫌というほど見続けながら、自分の罪の償いとして、自分だけを愛してくれる男を捜し続けて来たのだと言うのだ。

  わしと初めて出会った時も、あのような苦界に身を沈めてこそ、真実の愛に会えるのではないだろうかと思い、毎晩のように見知らぬ男に抱かれ、自分を救ってくれる男を待ち続けていたのだそうだ。

  冴がどのような女に見えるかは、その男のそれまでの女に対する考え方で、美しくも醜くも見えるのだそうだ。

  そして、冴は初めて会った晩、わしが冴に惚れた事はすぐにわかったそうだ。

  女は好きな男の前では一層美しくなれるから、わしは会う度に冴に心を奪われてしまったのだそうだ。

  それでも冴がわしの身請け話をすぐに受けなかったのは、わしが本当に冴を想い続けることが出来るのか、時間をかけることにより、崩れ去る愛ではないか確かめていたのだそうだ。

  わしが身請けする為に、紋付袴姿で訪れた時は、それまで生きて来た苦労が報われたような気がして、本当に嬉しかったと話してくれた。

  一緒になって二十年近く二人で苦労していた時の方が、今でも楽しい思い出として残っていると話した。

  冴の悲しそうな顔を見ながら、わしは冴の言う話が信じられなかった。きっと良い男が出来て、わしが他の女と寝た事を口実にして、わしから別れようとしているとしか思えなかった。

  それまでは冴にすまないと思っていたのだが、こんな作り話までしてわしから別れたいのかと思うと、思わず殴りたい衝動にかられた。

  その時冴がわしが考えていた事をそのまま口にした。あなたが信じられないのも無理もないのです。冴自身があなたのお陰で自分の宿命を長年忘れていられたのですからと、振り上げようとしていた腕の前に身を投げ出したのだ。

  少しずつ気持ちが落ち着いてくると、以前何度も不思議に思っていた事が蘇って来た。借金も無いのに、女郎屋で働いていた事。二十年もの間決して歳を取らない事。不思議なお守りの事。書や和歌や芸術など専門家まで驚かすほど詳しかった事などが思い出された。

  信じたくなかったが、冴の話が嘘ではないような気がした。認めてしまえば冴を失うことになることが、わしをかたくなにさせていた。

  そして冴はわしの手を握って、冴がわしの前から離れなければならないのは、わしの罪ではなく、冴の罪なのだと言うのだ。

  冴があの店を出せば、わしが面白くないと思うのはわかっていたが、借金の為に疲れ切って帰ってくるわしの姿を見るに忍びなかったのだと泣きながら詫びていた。

  わしは一体どうしたら取り返しがつくのかと冴に尋ねたのだが、冴は頭を振るばかりだった。

  わしがあの女を抱いたからと言って冴から心が離れてしまったとは思わないけれど、冴がわしから離れなければ、わしと子供の命が奪われてしまうのだと言うのだ。

  それが冴が受けた罰なのだと言うのだ。
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by shou20031 | 2005-02-27 22:48 | 大人のメルヘン

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