人気ブログランキング |

中国歴史小説と幻想的な恋の話


「源じいさんが愛した女」 第13話 白衣の天使


c0039644_0343674.jpg

           ラファエル前派  サー フランク デッキー
           名前の通りイギリスの貴族。
           写真は決して絵画を上回れないそう思わせる肖像画だ
           
人気blogランキング
訪れた方はここをクリックして下さい。
「小説・詩の部門」
お蔭様で現在第3位です。有難うございます。これかもよろしくお願いします。
幻の様な一位でした
あなたのクリックで再度一位を目指します。



 源じいさんはそこまで話すと少し苦しそうに咳をした。
「源じいさん。今日はその辺りで止めておこう。体がだいぶ疲れている」
 
 私は源じいさんの疲れた様子を見ながら、明日にでも源じいさんの入院の手配をしようと考えていた。
 源じいさんは咳が納まると、静かに寝息を立て始めた。
 
 沢の水音と風が木々を抜ける音だけが静かな時の流れを教えてくれた。慌しい街中から比べれば、まるで時計が止まったような時間の流れであった。

 その時ふと源じいさんはこの別荘で、心の中の時計を逆回転させていたのではないかと思えて来た。急に源じいさんと冴さんがその後どうしたのか気になった。
 
 源じいさんの別荘を後にして、私は紗絵の事を考えていた。源じいさんが冴さんに惚れ抜いていたように、私も紗絵以外の女は目に入らなかった。

 紗絵の笑顔や仕草が私の心を釘ずけにした。彼女の肌が私の欲望を狂わせ、腕の中でいつまでも少女のような紗絵が額に皺を寄せて悶える顔が私の本能をむき出しにさせた。
 
 紗絵とは研修医として大学病院に勤務してから六年間付き合っていた。紗絵は私より二つ年上で、看護士として勤務していた。

 私が当直の夜に、入院患者の容態が急変して、危篤状態になった。慌てて取り乱した私を落ち着かせて、何とか適切な処理を取らせてくれた。

 私は紗絵が病院で患者に慕われている姿を見るたびに彼女に引かれて行った。それから半年、私の執拗な口説きに紗絵も心を動かし付き合う事が出来た。
 
 大学病院に残った者は、やがて大学で研究者としての道を歩もうとしていたから、少しでも有利な条件を得ようと、担当教授の娘に狙いをつけていた。当然私もそうだったのだが、紗絵を知ると、何故かそう言う事がどうでも良くなってしまった。

 不思議なもので、私のそう言う態度がかえって教授には気に入られて、縁談話が持ち上がった。紗絵は私の縁談話を聞くと、病院には長期休暇を出して、私の前から姿を消した。
 
 私は紗絵の事を諦めたわけではないが、勧められるまま、教授の娘と会うことになった。何度目かのデートの最中に私は彼女の思い上がりに我慢出来ずに頬を殴ってしまった。その結果、当然のように、大学病院から今の立川の診療所へ出された。
 
 紗絵も大学での研究の道も失った私は、アルコールを浴びるような荒んだ生活をしていたが、アパートの前に紗絵が立っているのを見た日から私は自分の生活を見つめ直すようになていた。
 
 源じいさんの山荘から帰るとアパートの部屋に明かりが点いていた。
「お帰りなさい」
 部屋のドアを開けると紗絵の声が聞こえた。
「どうしたの。浮かない顔をして」
 紗絵は部屋に入った私の顔を見て心配そうに尋ねた。

「源じいさんがだいぶ弱って来たんだ。早いうちに病院に入院させないと危険なんだ」
「源じいさんって、奥多摩の山の中で死にたいと言っていた人」
 今まで一度も源じいさんの事を触れようとしなかった紗絵が尋ねた。
by shou20031 | 2005-02-22 00:17 | 大人のメルヘン

<< 「源じいさんが愛した女」 第1...      「源じいさんの愛した女」 第1... >>

永遠の愛ってあるのだろうか
by shou20031
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30


人気blogランキングへ
訪問された方は上をクリックして下さい。励みになります.
{小説・詩の部門}
クリックは一人一日一回のみ有効です。


翔へのご連絡は
shou20031@
excite.co.jp
カテゴリ
以前の記事
検索
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧