中国歴史小説と幻想的な恋の話


「源じいさんが愛した女」 第4話 金の怖さ

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明治時代日本にも住んでいた印象派のアメリカ人女性画家 
リラ キャボット ペリー
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「先生。話の続きを聞いてくれるか」
 私がグラスを持って頷くと、横になった源じいさんは天上を見つめて話続けた。
「冴に夜の小遣い稼ぎは止めてくれと言われたが、金を稼ぐ魅力を知ったわしは、前以上に働いた。しかし、どこにも嫉妬深い奴はいるもので、小料理屋の手伝いをしている事を、店の主人に告げ口する奴がいた。店を辞めるか、手伝いを止めるか、どっちにするかと迫られてな。
 いま小遣いを稼げないと冴に会えなくなると思うから、実は実家の母親が病気で薬代がいるのですと、嘘をついてしまった。

 すると、けちだとばかり思っていた主人が涙を流して、財布から十円銀貨をわしの手に握らせるんだ。十円と言っても想像も出来ないかもしれないが、今の金で言えば何万円ぐらいだろうか、それまで手にした事もない金だった。 
 三日休みをやるからこの金で薬を買って、お母さんの看病をしに帰りなさいと言うのだ。
 
 まさかこんな結果になるとは思わなかったから、いっそ本当の事を言って許してもらおうかと思った。冴にも会いたいと思って、ありがとうございますと嘘の涙を流して、冴のところへ駆け込んだ。

 今だったら、嘘の一つや二つ平気でつけるが、まだ若かったわしは、自分の嘘に耐え切れなくなってしまい、冴の前に十円銀貨を投げ出して、主人に話した嘘を告げた。その時、冴に思い切り頬を殴られたおかげで、初めて自分のしなければならない事がわかった。 

 すぐに店に帰って、主人に冴の事も隠さずに、本当の事を話したら、何も言わず許してくれたんだ。そして十円はわしが嘘をついた罰としてわしに任せるから、とにかく取っておきなさいと、いくら受け取れないと言っても、財布に収めてくれなかった。 
 金を稼ぐのが楽しくてしょうがなかったわしが、思わぬ大金を前に初めて、金の怖さを感じた。

 十円銀貨を握り締めて自分の部屋に戻ってな、どうしたらこの十円を返せるかとずっと考えた。
 やがてこの十円は一所懸命に働いて返せと言う事だとわかったんだ。

 翌日の朝から小僧さんより早く起きて店の前の掃除をした。夜は番頭さんより遅くまで店の品物の整理をした。
 一所懸命働いていると、その気持ちは相手にも伝わるのか、薪炭を配達に行くと以前は貰ったこともない人からも小遣いを頂くようになった。貯めて行くといつの間にか馬鹿にできない金額になっていた。

 二十歳の時に番頭さんが急に重い病気で、店をやすむようになった。年嵩の手代だったわしが、番頭見習いと言う事で、店の切り盛りを任されるようになったんだ。
 それまで番頭さんの脇で夜遅くまで仕事していたのが役に立って、たいした失敗もなく仕事をこなす事が出来た。

 病気が治って番頭さんが戻ってきても、番頭格という事で番頭さんの仕事を手伝うようになってな。番頭になれば給金が増えて、外に家を借りられるのだが、わしの心にはある決心が芽生えていた。手代の時と同じように店の部屋に寝泊りして、必死に金を貯めたよ。
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by shou20031 | 2005-02-13 00:18 | 大人のメルヘン

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